第1回を東京お台場、第2回を長崎水辺の森公園にて開催し、毎回大きな注目を集めている芸術と平和の屋外イベント、ピースウォールの第三の設置場所は、神戸の主要観光スポットであるメリケンパークが選定されました。
メリケンパークは、近くに米国領事館があったことから「アメリカン」が訛って「メリケン波止場」と呼ばれるようになったのが始まりです。神戸のランドマークであるポートタワーを間近に臨み、海を背にすると、正面には神戸港開港120年を記念して建てられた海洋博物館、後方に神戸港名物であるサンタマリア号の複製、オリエンタルホテル、右方に阪神大震災の爪跡を生々しく残した震災メモリアルパーク、左方にハーバーランドや観覧車などといった豊富な観光スポットに恵まれた8000の広場です。この度のピースウォールは、そんな絶好のロケーションの中央に設置されたのです。
本展は、過去2回の開催同様、高さ2,4mの平和の壁19ブロックに、最新のオンデマンド技術を用いて原画に忠実にプリントし、防水加工を施したアートパネルと世界中から寄せられた平和のメッセージとともに設置致しました。今回、全国より選抜された芸術作品は日本画、洋画、水墨、書道、文芸、写真、工芸その他合計219点。それらをジャンル、作風、イメージ、バランス等を考慮の上、区分けして3列に配置させ、まだ厳しい残暑の最中、9月の8日、9日、10日に芸術と平和への願いを発信すべく開催致しました。平和のメッセージは、これまで同様各国大使、全国の行政機関要職者、文化人やタレント等各界の著名な皆様より寄せられ、核兵器廃絶や恒久平和への思いを来場の人々に訴えました。
毎回、公開初日は大雨に見舞われ、作品パネルの一部に滲みが出るなどの事故があり、天候に左右されない頑丈なパネルを改良して参りました。しかし、この度は設営中に強烈な暴風雨に襲われ、作業は難航をきわめました。というのも、土台の壁面に常時激しい雨が流れ、作品パネルを接着することが不可能となったのです。やむを得ず、深夜に雨が上がるのを待っての作業となり、8日の早朝ギリギリの完成となってしまいました。
開催初日は前日の大雨が嘘のような快晴となりましたが、平日であったため客足はまずまずといったところでした。メリケンパークに突然現れた鮮やかな赤い壁と平和のメッセージ、そして美しいアートパネルの数々に目を奪われる来場者の姿が見受けられました。
開催2日目も晴天に恵まれ、午後からは公園に訪れる人々も多く、海洋博物館やポートタワー、ハーバーランドなどへの行き帰りの観光客や修学旅行生などの団体客、家族や愛犬と休日を過ごす近郊の住民で予想以上に賑わいました。
神戸は日本三大夜景や日本夜景百選にも数えられる多くのスポットを持つ名所として知られていますが、本展のアートパネルも夜間照明を施し、神戸の夜景に華を添えていたのではと思われます。
3日目は時々集中的に強い雨が降る天候となったものの、おおむね陽気に恵まれ、前日同様多くの人々の来訪がありました。特にこの日は休日を楽しむ子供達が多く、スタッフの配る風船を手に様々なアートパネルを見つめる小さな姿が大変印象的でした。
ピースウォールも今回で3回目を迎え、過去の反省を生かし、風雨に対してはほぼ万全の耐性であり、その点は今までより一層の向上を見せられたと思います。しかし、今回は設営中の大雨でアートパネルの接着が不安定になり、その上激しい温度差によって、会期中に一部のパネルが外れたり反り返るなどの現象が見られました。これら全ては不可抗力とはいえ、スタッフの対応を含め今後の課題とさせて頂きます。
展覧会そのものは大変に好評で、来場者に「次回はいつやるのか? また神戸でやらないのか?」と帰りがけに尋ねられる事が多く、再びこの地での開催を望む地元の親子連れや熱心に会場の景観をカメラで撮影するご年配の方などの生の声が寄せられました。このように、来場の客層は様々で、日中、午後は年配層が多く、夕方過ぎからは家族連れも多くなり、日が落ちる頃には夜景を楽しむ若者が足を運ぶという具合で、まさに老若男女多くの方が訪れて下さいました。
今回も大成功に終わった本展ですが、もうひとつ今後の課題を挙げるとすれば、展覧会の趣旨がはっきりしている割に、一部の芸術作品の内容、テーマ、モチーフが希薄であったり意味不明であり、このイベントへの関心や全体の質を落としかねない部分がやや感じられたという意見が寄せられたことです。芸術作品の受け取り方は人様々ではありますが、弊社としてもその点を考慮し、作品選定基準の見直しはもとより、芸術家の皆様により一層の創作意欲を燃やして頂けるよう応援して参りたいと思います。
さらに、今後の展望として、弊社が企業理念として掲げている“新たな価値観、社会遺産の創造を目指して”という方向性に則り、これからも平和の壁を芸術文化と平和運動の懸け橋として国内や世界に向け発信していくとともに、芸術家の皆様と共に有意義な活動を行って参る所存です。
尚、ここ神戸は、ピースウォール実行委員会の一員であり、弊社における出版および展覧会業務において永年に渡りご助力賜りました故・秋吉和夫先生(2005年10月28日没)の出生地であり、この場を借りて、故人の功労に改めて感謝と追悼の意を表します。
ピースウォール実行委員会
|