大きな話題をさらったお台場での開催に続く、新たな『ピースウォール』臨時設置場所には長崎が選ばれました。
長崎は、古くから海外交易の窓口として栄え、西洋の文化に刺激されながら、西洋文化と東洋文化が融合し、独自の文化を築き、数多くの作家達を魅了してきました。当時の姿を現代に残す洋館、寺院、教会、石畳などは長崎観光の魅力となっており、長崎特有の時間の流れ、異国情緒を感じる事ができます。
今回会場となった「長崎水辺の森公園」は、2004年に観光名所であるグラバー園やオランダ坂のある南山手、東山手地区にオープンした、長崎県美術館と一体となった広大な施設で、長崎観光でも人気のスポットです。連日様々なイベントが催され、観光客や長崎市民で大変な賑わいをみせます。
本展は開催前からマスコミに注目され、長崎新聞、朝日新聞、読売新聞、西日本新聞の記事やテレビ長崎の放送を観た地元の市民が多数訪れました。また、市内のポスター掲示も集客に効果を示しました。
『ピースウォール長崎2006』は、天候に恵まれた中、3月17日に開幕しました。壁の設営は、グッドデザイン賞を受賞した公園のモダンなデザインと地形を生かし、打ち上げられた巨大バルーンと共に対岸の稲佐山展望台からも会場の様子を一望する事ができるなど、公園に出現したアミューズメント施設のような印象を与えました。また、昼間の会場の光景と、ライトアップされ、作品が宙に浮かび上がった様な幻想的な夜間との雰囲気の差も大きく、偶然にも屋外ならではの演出効果がありました。
本展のために寄せられた平和のメッセージは、各行政自治体、国会議員、俳優、タレント、芸術家にいたるまで国境を超え幅広い方から頂きました。いずれの言葉も平和を愛し、平和を希求する心が反映され、来世紀に向けて残すべき遺産となりました。
長崎県美術館に隣接しているため、美術に関心の深い方の来場も多く、出展作品のクオリティーの高さと平和に関するメッセージに高い関心が寄せられました。夕方になると、海や山は赤々とした陽光に染まり始め、自然界の色調・色彩と作品とが一体となっていく感覚をおぼえます。18日土曜日はあいにくの雨で、公園を訪れる方も少なく、来場数は予想よりも下回りました。しかし、雨の中でも作品を鑑賞できる本展に大変興味を示す方も多かったようです。
ここで幾つか来場者の声をご紹介します。「この様な平和を訴える活動は、長崎市民としては是非応援して行きたい。」「日本中の人にこのメッセージを伝えて欲しい。」「核を保有する国の人々は、核の恐ろしさを知らない場合が多い。自分も写真家として粘り強く伝えていくこうと思う。」「様々な分野の作品を美術館ではなく気軽に観る事ができて良かった。」等々ありました。東京でのピースウォールを観て頂いた方の来場もあり、次回の開催を望む声もありました。
19日、20日は天候も回復し、早朝から家族連れや学生、近隣の幼稚園や小学校の遠足もあり、本展で一番の賑わいを見せ、壁と同色のロゴ入り風船の配布によって、更に人足が増加しました。 ここでの美術鑑賞は美術館とは違い、出入り口も順路も無く開放的な感覚を与え、気軽に作品を楽しむ姿がありました。小さな子供から年配者まで幅広い年齢層の方が同じ空間を楽しむというのもピースウォールの魅力の一つと感じます。
本展のように屋外に平和のメッセージと芸術作品を同時に展示し、一般の方に気軽に観て頂けるイベントは他になかなかありません。芸術に強い関心を持つ方以外の人々に、公園という憩いの場で気軽に芸術作品に触れる機会を提供する事ができたと云えます。さらに、平和に対する意識を再認識する機会にもなったことでしょう。
「日本中にピースウォールのメッセージを伝えて欲しい」という言葉を実現させるため、引き続き各地での開催を行って参ります。再び日本が戦争の道を歩み、美術家が創作の自由を奪われる事のないよう、より多くの方に思いを伝えて参る所存です。
芸術作品をご提供頂きましたアーティストの皆様と、メッセージを寄せて下さいました皆様に心から感謝申し上げます。
(ピースウォール実行委員会)
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