数々の展覧会で、欧米人の関心を集める日本の書道。
しかし、日本では書道人口は高齢化傾向にあり、高名な大家の相継ぐ他界、若い世代の書道離れによりその将来が危ぶまれている。
日本人は、日本の教育はなぜ書道への関心を失ってしまったのか?
私達は、日本の重要文化であり国際的に評価が高まっている書道の発展・普及を願い、若い世代の書道活動も応援します。

“書の甲子園”と呼ばれる国際高校選抜書展は今年で15回目を向かえる。
今回は埼玉県立川口高等学校を尋ねた。書道部はまだ発足7年。しかし、高校書道界では有名な書道部としてその名を知らしめている。

県立川口高校書道部は顧問の三宅昭雄先生が一から立ち上げた。書道部の練習時間は朝6時30分から8時30分まで朝練、授業が終り16時から夜21時までみっちり練習する。夏休み期間中は朝9時から21時までの猛特訓だ。部活では大字を中心に練習している。生徒同士で教えたり教えられたり、皆真剣に取り組んでいる。家に帰ってからも寝る間を惜しんで展覧会出展用の細字に取り組むという生徒もいる。
正座をして静かに書くのではなく、立って全身を使いながら1日何百枚と書き続ける。活動内容も練習量も、文化部というより運動部に近い雰囲気だ。部活の練習と言えば甲子園前の野球部が一番厳しいのだと思っていたが、運動部顔負けの練習量だ。全国で開催されている書道大会にはほとんど参加しているため、毎月大会出展用の作品締め切りに追われているという。
しかし、生徒はそれを苦には思っておらず、むしろ楽しんで練習している。


部長:森(2年)

現在(2006年度)部員は13人。2年生4人、1年生9人。
驚いた事に、ほとんどの部員が高校から書道を始めたという。
「駅前でやっていたパフォーマンスがカッコ良くて、自分もやってみたいと思って入りました。」
という生徒がいるように、県立川口高校の書道部はパフォーマンス的なことも行なっている。
9月の文化祭では中庭で、12月には川口駅前で大きな筆を使った実演パフォーマンスを行なっている。ずらりと横一列に並び、一面に敷かれた人数分の2×8の紙に音楽をかけながら一斉にみんなでリズムに乗せて歌詞を書く。このパフォーマンスは多くの人々に反響があり、毎年続けているそうだ。




「先生が優しい。身近に感じる」

「何でも気軽に話し合える部活の雰囲気が好き」

「大会に出展すると他校との交流もあるから、書道を通して色んな人と知り合える」

「今の自分が書に出る。気持ちが沈むと変な字になる」

「誰かに言われて書くのではなく、自分の中から書かなきゃと思わないと、いい字が書けない。やり直しができないから何度も書くしかない。でも、上手く書けた時はすっごく嬉しい」

「書道をやっている人は多いと思っていた。大会に出ると何千点と展示してあるから、書道をやる人は昔よりも増えていると思っていた。少なくなっているなんて知らなかったし、気づかなかった」

「“書は人なり”って言うのは、まさにその通りだった」

「今はまだ書道専門の道に進むかどうかは悩んでいます。でも、書自体は続けていきたいと思います」

「おばあさんになったら、子供に書を教えてあげたい」

「まだ何も決めていないし、あまり考えてもいないけど、今は書が楽しい。書くことも楽しいけど、部活のみんなとしていることが楽しい」

明るく答えてくれた生徒たち。練習中は一生懸命に真剣な表情だったが、部活が終ると普通の高校生らしい無邪気な表情に戻るのが印象的だった。

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