数々の展覧会で、欧米人の関心を集める日本の書道。
しかし、日本では書道人口は高齢化傾向にあり、高名な大家の相継ぐ他界、若い世代の書道離れによりその将来が危ぶまれている。
日本人は、日本の教育はなぜ書道への関心を失ってしまったのか?
私達は、日本の重要文化であり国際的に評価が高まっている書道の発展・普及を願い、若い世代の書道活動も応援します。

━━三宅先生のご経歴についてお聞かせ下さい。

三宅 大東文化大学の文学科(当時、書道科はまだ設立していない)を卒業し、埼玉の教員に採用されました。7年前に埼玉県立川口高校に赴任する時に「この学校で書道を盛んにしてほしい」との使命を受けまして、今に至ります。

━━三宅先生は何に重点をおいて生徒に指導されていますか?

三宅 私は書道団体に属していますが、それと教育は別のものと考えています。書道のいろいろなジャンル、いろいろな流派や団体の書き方を自分の中で吸収し、生徒たち1人1人に合わせて、その子に合ったものを教えています。確かに一つの作品として自分の色はありますが、それに固執せずできるだけ自分の中に多くの引き出しを持つことで、生徒たちが書に感じるチャンスを増やせたらと思っています。

━━では、三宅先生が生徒に望むことはなんですか?


三宅 書道に限らないことですが、芸術というのは自分を表現しそれを伝えることです。しかし、どうやって自分の中の思いや考えを伝えるのか、そういうことを掘り下げていくと自分の中で葛藤が起きるんです。「出来る」「出来ない」とか、「上手い」「上手くない」とかね。そういったところで生徒たちが悩み、苦しみながら「自分はこうしたいんだ」という答えを見つけて、「自分でこう書いたよ」と、そういう作品を見せてくれる時が一番嬉しいですね。そういう経験をした卒業生たちは、またここに戻ってきてくれますし、その思いを後輩に伝えてくれます。初代の子からみんなひっきりなしにやってきますし、この川高の書道部を愛してくれているのを感じて、嬉しく思っています。

━━みなさん戻ってこられるのは、この場所に思いが深いからなんでしょうね。

三宅 そうですね。3年間毎日のようにいて、毎日のように人と触れたり書と触れたりしていたので、一番心が安らげる、気持ちが出せる場所だという子が多くて、卒業してからもみんな来てくれるので嬉しく思っています。

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